自宅は「負債」なのか?―「投資と贅沢のバランス」

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自宅は「負債」なのか?―「投資と贅沢のバランス」

いきないきなりですが、みなさんは『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著)という本を読んだことはありますか?

私(コテンポ代表 伊藤)は大学生の頃に背伸びをして読んだものの、当時は大して意味も理解できないまま、なんとなく読んだ気になっていました。しかし、30代半ばになり、いざ実際に自宅の購入を検討するタイミングになって、ふと当時の記憶がよみがえり再読したのです。

そこには、概ねこのような記述がありました。

「保有していても収益を生まない自宅は『負債』である。金持ちになりたいのであれば、負債となる自宅ではなく、収益を生む不動産(=資産)を買いなさい」

みなさんは、この提言にどのような印象を持たれるでしょうか。

当時の私は、子どもの誕生など家族構成の変化から「気兼ねなく暮らせる持ち家」の必要性を強く実感していました。一方で、前職の不動産コンサルティング会社での経験もあり、「収益を生む不動産」を所有することの重要性も身に染みて理解していました。

とはいえ、「自宅=負債」と言い切るのはずいぶん極端ではないか、と感じたのも事実です。

なぜなら、賃貸であれ持ち家であれ、生きている限り住居費は避けて通れない支出だからです。自宅の購入を見送って収益物件を買ったとしても、自分が住む賃貸住宅の家賃は発生し続けます。それなら、家賃相当額の住宅ローンを組んで自宅を購入しても問題ないはずです。支払額が変わらないばかりか、ローンの返済が進むにつれて元金部分は手元の純資産として積み上がっていくため、長期的に見れば持ち家のほうが資産形成に寄与する側面もあります。

しかし一方で、不動産投資で一定の規模を築くには時間がかかります。同書の中でも「まず収益を生む資産を買い、その資産が生み出したキャッシュフローで大きな家や贅沢品を買いなさい」と説かれている通り、自宅の購入という一大イベントに時間・資金・労力を費やすくらいなら、そのリソースすべてを投資に集中させたほうが、将来的に裕福になれる可能性は高まります(投資自体の成否は一旦脇に置くとしても)。

そう考えると、「投資のチャンスを見送ってまで自宅を買うべきか」と迷うのも無理はありません。

自宅を「投資」として捉える視点

この迷いに対して、私が辿り着いた結論は「自宅を投資として捉える視点を持つこと」です。

もっと分かりやすく言えば、「購入する住宅の何割が『投資』にあたり、何割が『贅沢(居住満足度)』にあたるのか」という基準を自分の中に持つということです。

自宅を購入する際、多くの人は「毎月いくらまでなら払えるか」という返済能力を基準にしがちです。その考え方自体を否定するつもりはありませんが、それだけを基準に選んでしまうと、購入した住宅に投資的な視点が一切抜け落ちてしまいます。

つまり、「自分にとってはかけがえのない価値があるが、第三者(市場)から見るとさほど価値がない」という状態に陥るリスクがあるのです。

「住み心地のよさ」と「市場価値」のズレ

例えば、単身者が広くて高価な家を購入し、使い勝手を優先して贅沢なワンルームにフルリノベーションしたとします。内装は自分好みのダークトーンで統一し、雰囲気重視の間接照明を設置する――住んでいる本人の満足度は非常に高いはずです。

しかし、いざ何らかの理由でその家を「売る」「貸す」となったとき、投じた資金を回収できる可能性は決して高くありません。

なぜなら、広い面積の物件を求める人のボリュームゾーンは、どうしても「ファミリー世帯」だからです。「一人暮らしでお金があり、あえて広いワンルームに住みたい」という層もゼロではありませんが、市場全体で見ればごく少数派です。最も需要があるファミリー層から評価されない間取りにしてしまった時点で、最大のチャンスを自ら手放していることになります。

一般的な投資とは、「投じたリソースに対して総合的にプラスの収益が見込める対象にお金を投じること」です。上記の例では、住まいとしての個人的な満足度は満点だったとしても、投資としての評価は極めて低いと言わざるを得ません。

あなたの自宅は何%が「投資」で、何%が「贅沢」か?

自宅を投資用不動産として捉えるなら、次のような客観的な問いを持つことが不可欠です。

  • いま支払っている住宅ローンや維持費は、この家を賃貸に出したときに同額以上の家賃で回収できるか?
  • 将来売却することになったとき、投じた資金(取得費+諸費用)以上の価格で売れるか?

もし、市場の相場と比べて購入費や住宅費が明らかに割高なのであれば、その差額分こそが「自分自身の満足度(=贅沢)のために投じた資金」だと判断できます。

自宅は純粋な収益物件ではありませんから、ある程度の「贅沢」が含まれるのは当然ですし、それ自体は悪いことではありません。

大切なのは、「自分の家が、いまどういったバランスの上に成り立っているのか」を客観的に把握しておくことです。

「このうち80%は手堅い投資で、残り20%は暮らしの満足度を高めるための贅沢費だな」という自覚と認識を持っておくだけで、将来もしもの事態が訪れたとき、自宅はあなたを苦しめる負債ではなく、あなたを助けてくれる確かな「資産」となるはずです。