地域のためと自分の想いと投資の適正バランス

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地域のためと自分の想いと投資の適正バランス

古い家の活用の仕事をしていると、よく耳にするキーワードがあります。 それは「地域のために、この家を役立てたい」という言葉です。

自分が育った地域だから、お世話になったから――理由は様々ですが、特にご親族から建物を相続された方からご相談いただく際に、多く聞かれる言葉です。

まず初めに申し上げておきたいのは、その想いは非常に尊く、大切にすべきものだということです。

1. 「地域のため」と「事業の持続可能性」のバランス

自身の利益だけに傾倒した不動産投資はシンプルですが、地域住民との間に軋轢を生むことも少なくありません(商業地のように人と人との関わりが薄いエリアを除けば、細く長く続けるという意味でも難易度が高くなります)。

そういった投資的観点に立った実害という点を抜きにしても、自分の利益だけではない何かに還元したいという考え方自体、とても素晴らしいものです。

一方で、一見するとボランティアのように、地域や関係者のために心血を注ぎすぎると、事業単体として成り立たなくなり、オーナーや関係者に過度な経済的・時間的負担がかかってしまいます。

「それでもいい、持ち出しになっても構わない」という選択も、一つの正解ではあります。しかし、多くの場合、古い家の活用(もっとストレートに言えば不動産投資)には一定の利益が求められます。なぜなら多くの人にとって、不動産活用を通じて得られる収入は、「地域のため」という想いと同じくらい現実に重要な要素だからです。

どちらか一方が正しいわけではありません。大切なのは、持続可能な適正なバランスをとることだと個人的には考えています。

2. 「想い」が強すぎることが生む落とし穴

これは少し余談ですが、投資としてのプロジェクトの成功を求める際、オーナーの「想い(あるいは好み)」が強すぎることが障害になるケースもあります。

先述の「地域に人が集まる場所をつくりたい」「困っている人の課題を解消したい」といった社会的な目的が明確な場合、提供するサービスやゴールもはっきりしているため、企画の軸がブレにくいという特徴があります。

例えば、「地域に人が集まる場所をつくりたい」のであれば、集まれる場所をつくればいいのです。利用したい人の顔も具体的にイメージできているか、あるいは直接対話ができる状態にあるため、「何があったらうれしいか」「どんな空間が良いか」をヒアリングし、それをカタチにすることはそこまで難しくありません。

一方、問題になりやすいのは、オーナー自身の「自分はこういう雰囲気が好きだから、きっとこっちのほうが喜ばれるはずだ」という主観をベースにしたアプローチです。

当たり前の話ですが、その建物を利用する人は、オーナー自身ではありません。私たちが考えるべきは、「この建物の魅力を最大化できる使い方やデザインは何か」であり、「それが投資として成立するか」という点です。そして、そのためには「誰をターゲットに設定するか」という観点が欠かせません。

意見を聴くべき相手は、設定したターゲット像の人物(=ペルソナ)であり、大切なのは「その人がどういうデザインや仕組みに価値を感じるか」です。

ここを見誤ると、プロジェクトはたちまち「自分よがり」なものになってしまいます。ターゲット層とオーナーの好みが偶然完全に一致していれば問題ありませんが、現実にはそう上手くいきません。

なぜなら、不動産を所有・相続する人たちの年齢層と、古い建物を使って新しく何かを始めてみたいと考えるターゲット層の年齢層には、実際には乖離があるケースがほとんどだからです。

3. 所有者目線と利用者目線を切り離す難しさ

とはいえ、自分の所有物である不動産を自分から切り離し、「自分以外の誰かのため」を起点に考えるのは、実は非常に難しいことです。「投資経験が少ないから」と言ってしまえば身も蓋もありませんが、資産運用の経験を積む機会が少なかった日本の社会的背景も少なからず影響しているように思います。

「自分の所有物でありながら、目的を達成しようとすると自分の思い通りにはならない」――このジレンマを受け入れ、客観的な視点でプロジェクトを進められるかどうか。それこそが、古い家を活用する上で極めて重要な分岐点となります。

4. まとめ

ここまでの話をまとめると、以下のようになります。

  • 古い家の活用には、「地域の活性化(社会性)」と「投資(事業性)」という2つの側面がある。
  • 社会性へ寄りすぎると持続可能性が下がり、属的なプロジェクトになりやすい。一方、事業性へ寄りすぎると地域との持続可能な関係性を築くことが難しくなる。
  • 重要なのは、その2つの適正なバランスを見極めること。
  • どのケースであっても、「自分がどうしたいか」と同じくらい「この建物を使ってくれる人はどう思うか」という視点を持つことが不可欠である。

古い家の活用には、時間と労力、そして場合によっては多額の資金を投入することになります。

せっかくの素晴らしい取り組みが誰からも評価されず、求められないという結果に陥らないよう、「何のために行う取り組みなのか」をしっかりと見据えること。それが、プロジェクト成功の最も確かな鍵だと考えています。