“古さ”を活かす建物の使い方

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“古さ”を活かす建物の使い方

建物が古いことによるメリット・デメリット

古い建物には、メリットだけでなく当然デメリットも存在します。 というより、一般的にはデメリットに目が向くことのほうが多いのではないでしょうか。

たとえば「見た目」の問題。古いことが新しさに対してネガティブに捉えられる最大の理由は、「古くさくて嫌だ」という直感的な拒絶感かもしれません。そのほかにも、断熱性や耐震性といった建物の「性能」が低いことへの懸念、新築のような保証がないこと、そして「誰かが使ったあとの中古感」が気になるという方も多いのではないでしょうか。

これらはすべて理解できますし、見方によっては確かにその通りだと思います。

一方、メリットとしてはどのようなことが考えられるでしょうか。

1つ目は、時代を経たからこそ醸し出される「レトロな雰囲気」です。 これにはさまざまな解釈がありますが、一番わかりやすいポイントは、年月を重ねることでしか表現できない「本物のレトロ感」です。表面的なレトロ風デザインや古民家風といった二次加工ではなく、実際に時を刻んできた素材感や風合いそのものにこそ説得力があります。これを人工的に再現しようとすると、莫大なコストがかかる上に、そもそもが本質的ではありません。古い建物の雰囲気をそのまま「魅力」へと転じることこそが、最も自然で経済合理的な選択だと私たちは考えています。

2つ目は、その地域や建物が培ってきた「歴史」です。 歴史的な寺社仏閣であっても、ただ古いというだけでその建物の真価を理解できる人はごく少数です。「誰によって建てられ、どのような歴史を経て今の姿があるのか」という一連のストーリーが伴って初めて、その建物の目に見えない魅力が最大化されます。

3つ目は、少し現実的な話ですが、新築と比較して「経済的合理性がある」ということです。 建物としてはまだ十分に使える状態であっても、一定年数を超過した建物は日本の評価基準において極端に低い価格が設定されます。これは売る側にとってはデメリットですが、買う側にとっては極めて大きなメリットになり得ます。

細かな魅力はほかにもありますが、私たちが考える「古い建物が新築に対して優位に立てるポイント」は、大きく分けて「レトロな雰囲気」「歴史(ストーリー)」「経済性」の3点です。

“古さ”を活かす建物の使い方

この観点に立ち返ったとき、古い建物を利活用するにあたって、「古いこと」をメリットに転じさせやすい使い方にはどのようなものがあるでしょうか。

検証対象として一番わかりやすいのが「住宅」です。

住宅は文字通り「住むこと」を目的とした建物です。多くの方が住宅に求める条件の上位には、「豊かな住環境」が挙がるのではないでしょうか。具体的にそれには以下のような要素が含まれます。

① 断熱性などの高い建物性能
② 耐震性などの安全性
③ 採光や眺望といった環境要因
④ 公園などの公共設備の充実や学区などの周辺環境

この場合、古い建物の魅力をそのまま享受するのは難しいと言わざるを得ません。なぜなら④や③の環境要因は建物以外の要素(あるいは部分的な改修)でカバーできることもありますが、①や②の性能・安全性に関しては、大規模な改修工事を行わない限り実現が困難だからです。

仮に何らかの理由で古い住宅にこだわったとしても、大規模工事を行えば古い建物の持つ風合いが損なわれてしまう上、新築と比べても経済的なお得感が薄れてしまいます。「同じ予算を出せば新築が手に入る」となった場合、それでも古い建物を活かそうと考える人は現実的にそう多くはありません。そのため、古い建物を住宅として再利用するのは、コストパフォーマンスの面で難しい選択になるケースが多いのです。

一方で、「古いこと」をそのまま価値(メリット)に転換しやすい用途には、次のようなものがあります。

  • a. 店舗:古い建物の持つ独自の雰囲気がそのままお店の世界観となり、ダイレクトに集客力を生み出すわかりやすい活用法です。
  • b. 宿泊施設:住宅ほどの過剰な性能やコストをかけずに、適度な改修で快適性を確保しながら古い建物の情緒的な魅力を最大化できます。
  • c. レンタルスペース等のシェアサービス:主に商用目的で利用されるため、店舗や宿泊施設と同様に、古さのデメリットよりも「雰囲気」というメリットを前面に押し出せる方法です。
  • d. 歴史的建造物としての活用:レアケースではありますが、建物の歴史的背景に着目して価値を高める方法です。(※第三者機関による認定や公的な評価など客観的な裏付けが必要となります)

私たちが考える「古い建物の魅力を引き出せる使い方」は、主にこの4つです。

経済合理性を無視すれば選択肢はいくらでも広がりますが、現実的にそれを無視してプロジェクトを進められるケースは多くありません。だからこそ私たちは、「その建物にとってどの使い方が最適か」を都度見極め、最適なソリューションを導き出しています。

あなたが関わっているその古い建物には、どんな可能性が眠っているでしょうか?